~私たちの水戸っぽライフ~
挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す
水戸のまちなか大通り等魅力向上検討検討協議会では、2021年度に水戸まちなか再生に向けた未来ビジョンを作成しました。
コンセプトは「~私たちの水戸っぽライフ~挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す」
歴史・地形的分析や、位置情報データなど多角的分析から水戸まちなかのコンパクトな都市骨格を「ISLAND CITY」と名付け、計画的なコンパクトシティ施策と実践的なストリートデザインの視点から、住む・働く・学ぶ・遊ぶが融合した、人中心の都市空間再編を目指すものです。
さらに、水戸のまちなかを「誰もがもっている挑戦心」を育む場にしていきたい、という地元に関わる人の想い。単一機能の商業モールではなく、用途混在した都市だからこそ起こりうる、市民一人ひとりの“挑戦心”を刺激する空間、そして挑戦を支える仕組みを作ることで“自分ゴト”として行動を促し、その行動が共感を呼び新たな挑戦へと連鎖する、魁のまち水戸にふさわしい新たな「水戸っぽライフスタイル」を描いています。
ここでは、空洞化により衰退著しい水戸まちなかの現状を再確認した上で、私たちが目指す水戸まちなかのありたい姿=未来ビジョンについてご紹介いたします。
水戸のまちなかの現状
対象エリア
本計画の対象エリア=「水戸のまちなか」と定義しているのは、水戸駅から国道50号沿いを中心とする157haのエリアです。
※このエリアは水戸市が定める「中心市街地活性化基本計画」における都市中枢ゾーンであり、またコンパクトシティの形成を図るための計画「水戸市立地適正化計画」において医療・福祉・商業などの都市機能を誘導し、効率的なサービス提供を図る「都市機能誘導区域」でもあります。
歴史的特徴-時代を切り開く水戸-
現在の水戸のまちなかの基礎は、江戸徳川御三家の城下町に端を発します。歴史の中での水戸を振り返ると、多くの志士に影響を与えたとされる「水戸学」の存在や、水戸の御老公、桜田門外の変といった「世直し」の土地柄です。
また水戸の3ぽい(飽きっぽい・怒りっぽい・理屈っぽい)という言葉もありますが、それは裏を返せば、進取の意気があり、義憤に駆られ時代を切り拓く、学問のまちであることを示しているとも言えます。
(画像:国立公文書データ「1645常陸国水戸城」)
地形的特徴-馬の背状の洪積台地-
水戸のまちなかはその周囲と20~30mの高低差があり、城下町として栄えていたころは水に囲まれた天然の要塞だったのだと思います。また、周囲と高低差があるものの、まちなか自体は平坦であり、今では地震や水害に強い防災拠点とも言える地形になっています。
(画像:「水戸市洪水ハザードマップ」令和2年7月公表版)
地理的特徴-広域都市圏・水戸-
水戸は東京から約100km圏で宇都宮や前橋、甲府とならぶ広域都市圏の中心でもあります。
400年以上にわたって歴史や文化、経済、交通、情報、そして人口が集積してきたこともあり、歴史・文化的な資源が豊富に存在しています。
衰退著しいまちなか-中心性の喪失-
国道50号大通りを軸に、主要企業や百貨店、個人商店が連なる水戸のまちなかは、市民にとって文字通り「ハレの場」でした。
しかし近年、水戸まちなかの空洞化が深刻化。歩行者通行量は最盛期の1/3、小売販売額の市総額割合は1/2、路線価は全国で唯一下落。駐車場、空き店舗、空地が目立つようになりました。
モータリゼーションに伴い、大規模な商業施設や行政機能が郊外へ進出・移転、まちなかを中心にドーナツ状に拡がる郊外住宅地に人々は住み、まちなかは通過経路となりました。
まちなかを歩いて感じたこと
ビジョンの検討にあたってまち歩きを行い、危機的状況を再認識。想像以上に空き地、空き店舗、青空駐車場が増加し、通行人はまばら。歩いている人には笑顔はなく、黙々と早足で通り過ぎていく。大通りは通過車両であふれ、道幅の細い裏通りは、歩行者が危険を感じる速度で車が通り過ぎていく。
かつて「ハレの場」として賑わいを見せていたころの面影はなく、まちなかの再生には都市構造や交通計画、ライフスタイルなど抜本的な改革が必要だと感じました。
水戸のまちなかの可能性
ユニークな地形的都市構造=「ISLAND CITY」
水戸のまちなかは、30mの高低差のある馬の背状の高台市街地です。近世以前までは、北部の那珂川と、今の倍以上の大きさのあった千波湖に囲まれ、水に囲まれた島のように見えていただろうその地形的都市構造を「ISLAND CITY」と名付けました。それは今も引き継がれており、高台の法面の緑地や、外周部から臨む絶景など、水戸のまちなかで私たちは400年以上前の人々と同じ風景を見ることができます。空間的領域性がはっきりとした水戸のまちなかは本来、歩行移動を中心として住み、働き、学び、遊ぶコンパクトな暮らしが実現しやすい場所。水戸独自のユニークな都市構造を再認識し、車から人中心の街なかを取戻すラストチャンスと位置づけたいと考えています。
課題のまとめ
未来ビジョン コンセプト
まちを創るのは人。誰もがもつ、何かを変えたり、創造したい気持ちから、行動が生まれ、まちは元気になる。
私たちが目指す水戸のまちなかは、「誰もが持っている挑戦心」を育む街である。
地元に関わる人から寄せられた想いをもとに思考をめぐらせていると、都市空間には「偶発的な出会い」「予期せぬきっかけ」から、五感が刺激され、アイディアをひらめき、仲間が共鳴する瞬間があることに気づきました。それは、消費のための商業モールと違う点だと考えます。
ISLAND CITYを舞台に、車から人中心の、住み・働き・学び・遊ぶ、水戸っぽライフスタイル
を実現していく―それを、「MITOLIVING ISLAND-挑戦心を育む、コンパクトなまちなか暮らしを取り戻す-」というコンセプトにとりまとめました。
未来ビジョンのターゲット
未来ビジョンの先に起こる行動
未来ビジョンのターゲットはまちなかで生きる人、まちなかで挑戦したい人。
主体となり調整したい主体となる人々(=アクションを起こす人)に対し、まちなかの再生を願う多くの支援者(=スキル・資金・心理的支援者)に応援してもらえる仕組みが必要です。
そのさきに、まちなかに関わるみんなが「自分ゴト」で考える、街のためにもなる「やりたいこと」「得意なこと」「好きなこと」を挑戦できるまちなかを目指します。新しい水戸っぽライフは、主体的な行動による前向きな社会実験の連続・連鎖から生まれます。
都市構造の考え方
近世のころ、“ISLAND CITY”には今の2倍以上の約14,000人もの人々がまちなかで生活していました。現在は郊外分散により“外延化した街”となり、まちなかの人口は約6,800人、人口密度は約43人/ha。あと3000人、まちなかの人口を増加させ、コンパクトで活気ある生きたまちなか“コンパクトシティ”にすることが出来たら、どういった暮らしやサービスが起こるでしょうか。
少子高齢化が著しい人口減少社会である日本では、選択と集中のまちづくりが求められています。水戸まちなかでのコンパクトな暮らしを実現することは水戸市全体にとって、さらには茨城県にとっても重要なことだと言えます。
交通計画の考え方
コンパクトなまちなか暮らしにはそれを支える交通計画が欠かせません。公共交通と徒歩、低速小型モビリティを中心とした便利で快適な交通ネットワークの実現を目指します。通過を目的としたまちなかへの自家用車の流入を制限し、まちなかの入り口周辺には自家用車から公共交通への乗り継ぎ用駐車場を配置、公共交通は水戸駅-大工町間の重複を避け、まちなかの内周と外周を循環する路線を整備。退屈な移動時間を「楽しいひと時」に変える公共交通モビリティや関連施設のデザイン、お得な制度と合わせて実現します。
まちなかの用途の考え方
郊外に拡大した住居、商業業務等をまちなかに誘導・再集積し、徒歩圏に職住学遊の用途が混在・融合した地区への転換を図ります。また、日常使いに加え、非常時の防災拠点としての機能も想定します。
ストリートデザインの考え方
沿道環境の設え
敷地境界を視覚的に曖昧にした沿道空間の活用や、ストリートとセットバック空間の一体的なデザインを目指します。
歩車道環境の設え
シームレスな空間を形成するデザイン上の創意工夫や安心感と居心地の良さを提供するカーブサイドの設え、シェアドスペースの思想によるストリートの再生を目指します。
歩行・滞留空間の設え
沿道商店主等のニーズを踏まえて植栽や散水設備を設置や柔軟な考え方によるバリアフリーへの配慮、仮設のファニチャーを活用したフレキシブルな設えを目指します。
実現に向けた取り組み方針
「車から人中心のまちなかを取り戻す」ためには、コンパクトシティとストリートデザイン、2つのアプローチが必要です。
官民が連携し、未来ビジョンを共有し、役割分担しながら、短期・中期・長期の事業に取り組みます。
実施体制(役割分担)
コンパクトシティの実現と徒歩圏にすべてが揃うまちなかづくり、ストリートデザインによるウォーカブルな場づくり、さらにはプロモーション活動等について、施策の性質ごとに実施体制を整理します。この中で、水戸市中心市街地活性化協議会は、まちなかの各種事業・施策等を推進し、水戸のまちなか大通り等魅力向上検討協議会は、空間利活用のあり方や実証実験、検証等を推進します。
実施施策(主要プロジェクト)
「実現に向けた戦略」に基づき、コンパクトシティとストリートデザイン、2つのアプローチについて、時間軸と具体性に配慮し、施策を展開していきます。
今後の対策・展開
安全環境づくり(社会実験・データ活用事業)
道路のハンプ先行導入(公共)、ParkingParkを見据えた南町自由広場でのまちなかチャレン ジ (民間・個人)、協賛者による事業継続(民間・個人)。そして事業効果を検証します。
共感者づくり(プロモーション・情報発信事業)
地権者や事業者の意識を高める事業の事例紹介、創業希望者とのミーティング、共感者を増やす講演会等を開催します。
賑わいづくり(社会実験・データ活用事業)
空き店舗活用のスキームづくりとして、モデル事業の候補箇所選定、チャレンジショップ開設に係る所有者協議、等。また様々なコンテンツの実験的誘致、等。さらに、チャレンジャーが自ら稼げる仕組みを構築します。
組織づくり
協議会構成員の役割分担を明確にし、一つの組織としてまちづくりに関わる必要がある。その上で、将来的な法人化を目指した組織体制のあり方を検討します。
ご覧いただきありがとうございました。
この未来ビジョンの妥当性については、2021年10月9日~同年10月31日まで実施した試行・実証実験の検証結果より実証されました。
詳しくは「水戸まちなかリビング作戦」のページをご覧ください。
住まいについての考え方
住まいは、まちなか暮らしの拠点。喧騒から切り離された要塞ではなく、賑わいや屋外空間に接続し、多様なスタイルを受容れできる実験的な住まいの空間を生み出します。また、既存の助成制度などをPR・拡張することで、まちなか暮らしをより身近なものにする仕組みづくりや、空きビルや老朽化した住居のリノベーションにより優良な住宅ストックを増やします。
働き方についての考え方
多地域居住、パラレルワーク、専業特化、自己研鑽活動、起業、起業トライアル…多様な働き方を受容れ、挑戦を応援する気分・仕組み・開かれた場のあるまちなかを目指します。また、SLOC、ロハス、手づくり感などのニーズに応えるお店づくりを生み出します。
学び・遊びについての考え方
まちなかで遊ぶうちに知り合った人とのつながりが、気付けば学びになっていた。学びに真摯に向き合ううちに、人生を楽しくする遊びになっていた。そんな体験が生まれる、屋内外で人のための居場所がたくさんあるまちなかがいい。
かつて水戸藩士たちがたちがまちなかで日々学び、遊んでいたように、今水戸にある萌芽・兆しを大切に、様々な気付きやきっかけに出会えるまちなかにしたい。